「小屋組と素材」リオタの屋根②

木造住宅の1つの顔ともいえる屋根。ステキな屋根をデザインするには、どうアプローチすればよいのでしょうか。本稿では、新刊『詳細図解 木造住宅のできるまで』(エクスナレッジ)の著者である関本竜太氏(リオタデザイン)が、木造屋根の設計を解説します。

 

2. 小屋組

 在来軸組構法で設計を行う場合は、構造(力の流れ)を感じられるよう、多くのケースで小屋組を見せるデザインを採用します。ただし、高さ制限などで十分な階高が確保できず、断熱層・垂木の高さにより、実質上の天井高が低くなるケースもあるので、小屋組を見せられない場合もあります[A]

 小屋組を現しにする際は伝統的な束立て式ではなく、登り梁形式とすることもよくあります[B]。小屋梁や小屋束、火打ち梁などがインテリアとして立ち現れてくると、狭小空間では目障りに感じられるからです。断面の大きな梁を使用するのではなく、ディメンションランバーなど見付けの小さい梁を細かいピッチで並べて、天井全体を構造の“面”として見せるのが好きですね[C]

 

A 天井高が確保できない場合(小屋組を見せない)

天井高が2,100~2,800㎜の主寝室。垂木間と天井懐に断熱材(高性能グラスウール)を充填し、天井はラワン合板仕上げとした。高性能グラスウールは、ほかの断熱材に比べて安価に施工できるものの、断熱層を分厚くする必要があるので(ここでは225㎜)、あらかじめ相応の天井懐を設定しておく必要がある

 

B 天井高が確保できる場合( 小屋組を見せる )

天井高が1,824~2,930㎜の主寝室。2重垂木構造として外側の垂木間・垂木上に断熱材(押出法ポリスチレンフォーム保温板3種b)を充填、内側の垂木は現しとした。断熱層の厚みは180㎜。屋根をより薄くする場合は、コストはかさむものの、フェノールフォームを採用する場合もある。野地板も現しにするので、垂木とともにスタンプを刻印しないように指示することも必要

 

C 小屋組を“ 面 ”として見せる( ディメンションランバー/製材/LVL+鉄 )

化粧梁は「呑川の家」のように、ディメンションランバー(ツーバイ材)にすることが多い。ローコストでラフな雰囲気を表現できるが、節は多め。スタンプを刻印しないような指示も必要である

大屋根の家」のようにスギやヒノキなどの製材とする場合は、上品な雰囲気の表現が可能。ここでは品質が明らかなJAS製材(機械等級区分構造用製材)を採用した[写真=山内拓也]

「緩斜面の家」では、鉄をLVLでサンドイッチした複合梁を採用。厳密な構造設計が必要になるものの、最小限の見付け寸法でスパンを大きく飛ばせる(8m)。構造設計は山田憲明氏(山田憲明構造設計事務所)が担当[写真=水谷綾子]

 

3.屋根の素材

 屋根材は、陸屋根を除いては原則的にガルバリウム鋼板を使用しています。軽くて耐久性があり、メンテナンスフリー。シャープな印象を与えてくれます。役物(棟換気・けらば・鼻隠し・雨樋・小庇など)も同素材で仕上げられます。特に、「耐摩カラーSGL」(日鉄鋼板)は昔からの定番。色のバリエーションも多く、意匠の幅も広がります。

「耐摩カラーSGL 耐摩ブラックパール」の立はぜ葺きで仕上げた「さつきの家」(片流れ屋根)。ほんのりと青味がかった色合いが、外壁や塀の木材(レッドシダー)、庭の美しさを引き立てる[写真=水谷綾子]

 

Infomation―『詳細図解 木造住宅のできるまで』(新刊)、好評発売中

『詳細図解 木造住宅のできるまで』は、2017年に竣工した「路地の家」(切妻屋根)の現場をモデルに、3Dパースや写真を使いながら木造住宅のつくり方を解説した一冊。「設計者の現場監理に必要な情報に加え、普通なら施工する職人さんだけが知っていればよいような情報までも網羅。意匠性・施工性・機能性のバランスが取れた真に美しい木造住宅ができていく過程を一緒に追体験していただければ幸いです」(関本竜太)

 

屋根仕上げについての解説。一般的な切妻屋根の施工について、通気層や防水層、屋根仕上げ(金属板)の納まりと施工手順について説明している

 

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