「人間と自然の融合」スノーピークの家づくり。①

国内経済が停滞するなかでも、業績を大きく伸ばしている企業があります。その1つがアウトドアブランドとして人気が高いスノーピーク。“衣・食・住・働・遊”のフィールドをあまねく網羅し、特に、住宅関連では“野遊びできる家。”をコンセプトに、規格住宅や街並みの監修を含むアーバンアウトドア事業を展開。その取り組みを紹介します。

自然と人間の融合を!

 暮らしや働き方に対する人々の意識は、コロナ禍を経験して大きく変化しました。それを俯瞰的に分析すれば―― 人間と自然の関係性に生じた変化―― と表現できるかもしれません。現代人の多くは、都市空間で大部分の時間を過ごしています。それは、人間と自然との乖離ともいえるでしょう。

 しかし、家のなかで過ごす時間が増え、街へと自由に繰り出すことができなかった状況が、都市空間で日常生活を営む人々の潜在意識を自然へと向けさせました。それが顕在化したのが、昨今のキャンプ・グランピング人気の高まりなのでしょう。

 

“おうち時間”でアウトドアを楽しむ

広いウッドデッキのスペースに、タープやアウトドアテーブル・チェアを置けば、アウトドアリビングの設えとなり、天気のいい日には太陽の恵みを感じながら、“自然”のなかで快適に過ごすことができる

スノーピークによると、“おうち時間”が増えるなかで、自宅でも使用できるアウトドア用品として「コロダッチシリーズ」の売れ行きが好調だという。火の通りが抜群で、肉も野菜もおいしく調理できるアイテムとして評価が高い

 

 しかしながら、〝自然との融合による人間性の回復〞を経営哲学として、60年余の長きにわたり豊かなアウトドアライフを提唱してきたスノーピークによると、キャンプを楽しむ日本人の数は、今でも全体の1割程度にも満たないといいます[※]。都市部と自然豊かな地方部との物理的な距離が大きな要因の1つであると考えられます。

 こうした背景を踏まえ、〝野遊びできる家。〞をコンセプトとして、同社が都市生活のなかでも自然の豊かさを楽しむサービスを提案しているのがアーバンアウトドア事業です。

※ 日本オートキャンプ協会が行った調査

 

大自然のなかにあるスノーピークの本社

本社は新潟県三条市の山間の小高い丘陵地帯にあり、そこでキャンプ場も運営している。約5万坪の広大なフィールドの傍らに、開発を主とするオフィス、同社の歴史を展示しているミュージアム、自社製品を取りそろえた直営店で構成される

 

 自宅の庭やデッキテラスなどでバーベキューや焚き火を行うのに必要なアイテムをパッケージとして提案しているほか、地域密着型の工務店やアトリエ系の建築設計事務所、ディベロッパー(不動産業者)との連携による各種サービスを提供しています。

 具体的には、A:工務店のショールーム内でのショップ展開(パートーナー工務店は現在14社)、B:アウトドアブランドの事業で培った知見を生かした住宅・街づくりに関するデザイン監修、に大別されます。

 

工務店におけるショップ展開

建築家・伊礼智氏(伊礼智設計室)造園家・荻野寿也氏(荻野景観設計)との協業でも知られる滋賀の人気工務店・木の家専門店 谷口工務店では、MOV SQUAREを中心に住まいと暮らしを提案している。本社社屋、家具工場、北欧家具ショールーム、グリーンショップ、アーバンアウトドアショップがあり、スノーピークの商品も販売されている

 

②につづく