皆川明×中村好文×羽根建築工房「フィボナッチ螺旋の小屋ができるまで」

兵庫県立美術館で開催中の「ミナ ペルホネン/皆川明 つづく展」(2020年11月8日まで)。本展覧会の見どころの1つ「シェルハウス」は、てっぺんまでくるくるっと渦を巻くような美しい螺旋の壁が特徴です。この壁は、どのようにしてつくられているのか?設営現場を取材しました。

もし、あなたが建築家で、親しい友人から次のようなオーダーを受けたらどうしますか?

巻貝のようにぐるぐると渦を巻き、

年外壁がそのまま内壁になっていくような、

簡素で心地よい宿

ミナ ペルホネンの創設者でデザイナーの皆川明さんは、以前から夢だった小さな宿の構想を、友人で建築家の中村好文さんに依頼しました。そのときの皆川明さんのスケッチが「ミナ ペルホネン/皆川明 つづく展」に展示されています。

皆川明氏の構想スケッチ「ミナ ペルホネン/皆川明 つづく展」より

 

巻貝のような、竜巻の子どものような、くるくるっと描かれたスケッチから、中村さんが「フィボナッチ数列」にあてはめたプランにたどり着くまでにそう時間はかからなかったと言います。

 

フィボナッチ数列の黄金矩形

平面図「ミナペルホネン/皆川明 つづく展」より

 

柱が1本もなく、曲線を描く壁で構成されたプラン。これをどのように具現化するのか?

中村さんは、大阪の大工工務店の羽根建築工房に施工を依頼。曲面用の合板を使って成立できないか、原寸大をつくって検討を重ねたそうです。最終的に内側と外側に12mm厚の合板を重ね、合計24mm厚の螺旋の壁を立ち上げることになりました。

壁が立ち上がるまでを3分動画でご覧ください。後半の板材をきれいに早く張る工夫は見事です。

写真・ドローン撮影:杉野圭
スマホ動画:編集部

 

構造物としての強度を保ちつつ、それを感じさせないなめらかな螺旋を木の壁でつくるには、下地と仕上げの細かな割付が鍵となっています。『建築知識ビルダーズno.42』では、この壁の展開図を掲載しています。誌面と合わせて楽しんでいただけたら嬉しいです。

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