「内外の境界を美しく納めるディテール」昼の庭と夜の庭の美しい佇まい③

建築家・彦根明氏と造園家・荻野寿也氏がデザインを手がけたコートハウス「SGY」。建物のどの位置からも中庭の植栽を眺められ、居心地の良さは抜群です。昼も夜も。ここでは「SGY」の魅力と設計手法について、3回に分けて紹介します。

 

「SGY」では植栽の美しさを引き立てるためのディテールにも工夫が凝らされています。ここでは、注目すべき2つのディテールを紹介しましょう。彦根氏が得意とする既製品アルミ樹脂複合サッシを組み合わせた連窓のディテール、防火構造に対応する焼杉のディテールについてです。


1 庭を美しく見せる開口部の納まり

1:アルミ樹脂複合サッシには、枠廻りがすっきりと見えて断熱性能も高い(熱貫流率2.33[㎡/K]以下相当)「サーモスII H」(LIXIL)を採用。納まりは外部との連続性を重視して、障子枠が室内から見えない外付けとしている 2: 庭との一体感を高めるには、開口部に視線を遮る垂壁を設けないほうがよい。ここでは、サッシの上枠に合わせて天井を仕上げ、視線の抜けを確保 3:サッシは外がきれいに見えるFIX窓が理想的。ただし、通風の目的で一部を段窓として、突出し窓(一部FIX窓)を組み込んでいる。上下のサッシが室内から見えないように、枠に合わせてラワン合板仕上げの無目を設けている 4:腰壁の色は、サッシの色に合わせてダークブラウン色仕上げ(オイルステイン)とし、開口部全体をフレームのように見せている


最高天井高5,825㎜とした吹抜けのリビングに面する書斎スペースから1階を見下ろす。中庭と坪庭の2方向に視線が抜けるので、緑に囲まれているような感覚が得られる


2 焼きスギ板の外壁に映える新緑の樹木

1:屋根はカラーガルバリウム鋼板立はぜ葺き仕上げ。鋼板には、ガルバリウム鋼板のめっき層に微量のマグネシウムを添加して、従来比3倍超の耐食性を実現した次世代ガルバリウム鋼板「エスジーエル」(日鉄鋼板)による「耐摩カラーSGL」(日鉄鋼板)を採用 2:軒天井はスギ板仕上げ。ただし、建物は準防火地域内にあり、「延焼のおそれのある部分」(法2条6項)の範囲内にあるため、防火構造としなければならない。ここでは、下地を12㎜厚のケイ酸カルシウム板張り[国土交通大臣認定(認定番号:QF045RS-9113)]としている 3:外壁は焼きスギ板仕上げ。ただし、軒裏と同様に、防火構造としなければならない。ここでは、下地をラスモルタル20㎜厚[平12建告1359号第1第1号ロ(2)(ii)]として、防火構造を実現した


建物の外側にも砂利を敷き詰め、トキワマンサクやハクサンボクなどを植え込んだ。中庭と同様に、スポットライトを壁面の上部に設置。地明かりを確保しつつ、樹木をまんべんなくライトアップしている


玄関の前にも樹木を植え込む。玄関は両側がスリット窓となっており、中庭の様子をうかがうことができる。玄関扉を開けると、ライトアップされた中庭まで視線が抜ける。ブラケット「LEDB87936L(K)-LS」(東芝ライテック)で強調された焼きスギのテクスチュアも印象的


写真=中村風詩人

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