“たためる感じ”がしない たためる円卓

オープンハウスやイベント時に、誰かが住んでいるような自然な生活感を演出することは工務店や設計者にとって、大切な仕事の1つ。無垢の木や漆喰など自然素材を使った家ならなおさら、家具も空間に合わせて上質なものを選びたいと思うでしょう。そんな時に役に立つ「たためる円卓」をデザインしたマスタープラン 小谷和也氏にインタビューしました。

マスタープラン 小谷和也氏

中古マンションのリフォーム、リノベーションに特化した兵庫県の一級建築士事務所。奈良県の吉野杉の床材や珪藻土、漆喰などの塗り壁材といった自然素材を使い、引戸や障子といった和の装置を大事にした、「木のマンションリノベーション」を手がける。自身も超のつく椅子マニアで、現在、建築知識ビルダーズにて「小谷和也のおすわり講座」を連載中。

(下記、小谷氏インタビュー)

オープンハウスの際にテーブルがなくて困る、というのは建築会社ならではの悩みの1つです。建て主の手持ちのテーブルを新居でも引き続き使う場合は多く、引越し前に建て主の私物を借りるわけにもいきません。

なので、自社でテーブルを用意する必要があるわけですが、テーブルは大きく、重たいので搬入が本当に大変。天板と脚が分割できても天板を運ぶのは一苦労……。また、引渡し前の新居を傷つけるリスクは少しでも減らしたいというのが建築会社の本音です。

市販品を探しても、なかなか建築会社の理想とピッタリ合うものもなく。ならば自分でデザインしようと考えてできあがったのがこの「たためる円卓」です。しかし、天板も折りたため、小さくできるテーブルの構想や試作もしてきましたが、構造的な安定性やデザインで納得するものがなかなかできず早数年……。

とあるヴィンテージのサイドテーブルの構造から着想を得てやっと完成しました。

 



通常の座卓の脚は、たためるけれど天板はそのままというものが多いのですが、「たためる円卓」は天板が五等分に折れるため非常に小さくなります。対角線の脚を桟でつなぎクロスさせたつくりになっており、桟ごと脚を90度回転させることで天板もたためる構造を実現しています。もちろん、テーブルとしての強度や安定感も確保しています。

この構造はテーブルの裏をしっかり見ないと分からないため、たためる家具特有の野暮ったさを感じさせず、ぱっと見は普通のテーブルにしか見えないように考えたのがデザインの一番のポイントです。



脚は中間部でねじ込み式になっていて、H700のテーブルとしても、H380の座卓としても使える汎用性もこの「たためる円卓」の特徴です。



実は、「たためる円卓」のデザインは好きだけれど、“たためなくてよい”と言う建て主の声も多く、たためない円卓というものを別に商品化したくらいです(笑)。可変性とデザインの両立という私の目指す設計スタイルを具現化した家具といってよいと思います。

サイズはφ1,000と1,100の2サイズ。4人が普通に座れます。たたむと250×380×1000(1100)まで小さくなり、大人一人でも持ち運びできます。

素材は国産無垢の栗材を使用。突板や集成材の家具にはない重厚感をもっています。国産材や無垢材でつくられた家にしっくりと馴染みつつ、主張しすぎないすっきりとした佇まいのテーブルです。

 

教えてくれた人

デザイン:小谷和也(マスタープラン一級建築士事務所

製作:新木 聡(新木工房)

仕様:国産無垢栗材(橘商店)オイル仕上 H700(座卓時380)

価格:φ1,000 ¥264,000(税込/配送料別)

たためる円卓の紹介URL:

https://reno.mpl.co.jp/folding-round-table.php?fbclid=IwAR1ZoywmO1iyWsCycbZtZneu4ds94gEkkjV2czJvwBZ52zLmZ23gnXZHgp8

取材協力:マスタープラン一級建築士事務所

テキスト:編集部