「98%以上の排水を再生」―超小型水再生処理設備①―

水は私たちの生活に欠かせない資源。しかし、その資源を社会に広く供給するには、莫大なコストがかかります。しかも、排水の使いまわしが難しいのも水ならではの問題。今回は、水の再生技術を"設備”として展開するWOTAの技術・製品を紹介します。排水の再生率は何と98%以上にも達します。

水処理を”設備”として提供する

 水―それは21世紀を生きる人類にとって非常に大きな課題です。水資源が豊かな日本も無関係ではありません。確かに、現状では生活用水に困っている地域は多くはありません。しかし、上下水道を支えるインフラの老朽化問題や、人口が減少するなかでインフラの維持管理・更新のための財源と人材をどう確保していくかという課題が年々顕在化しています。

 現実として、2018年の水道法改正によって、外国資本を含む民間企業が水道事業に参入可能になっており、実際に海外企業との連携をスタートさせた自治体もあります。生活用水をどのように確保するのか、身近な問題として改めて考える必要があるでしょう。

 こうした社会問題の解決が期待されるプラットフォームを紹介しましょう。2014年に誕生したベンチャー企業WOTAによるAIを活用した水処理自律制御技術です。

 

水の問題を解決するWOTAの技術

 

2019年10月に発生した台風19号による災害時に、長野市(長野県)の避難所でシャワーキットとして使用された「WOTA BOX+屋外シャワーキット」。6カ所の避難所に計14台を設置し、1 0 月1 6 日~1 1 月1 2 日までの間に4,000回以上の入浴機会を提供した。2019年11月の発売以降、13自治体20避難所が設置しており、累計出荷台数は100台を超える

環境・防災街づくりや災害時の対応などにつ いて、WOTAと包括的業務提携を結んでいる 鎌倉市(神奈川県)の鎌倉駅前に設置された「WOSH」(2020年12月31日〜2021年1月4日)。手洗いとスマートフォンの除菌が行えるので、駅を使う多くの人が利用していた。鎌倉市内では合計5カ所に計6台を設置。その他の導入事例としては、病院や商業施設、オフィスなどがある。2020年7月の販売開始以降、出荷数は伸びており、2020年12月末には受注数が4,000台を超えた

 

WOTAの代表を務める前田瑶介氏は、その背景を次のように振り返ります。

 

WOTAで代表取締役社長CEOを務める前田瑶介氏は1992年生まれ。U30の起業家として世界から注目を集めている

 

 「大学(東京大学工学部)では、建築の水廻りに関心を抱いて勉学に励んでいました。なぜなら水廻りが建築設計の自由度を大きく左右しているからです。東日本大震災の体験に加え、水の問題への興味が深まった面もありました。現在、上下水道の維持管理には巨大な〝施設〞が必要で、維持管理を行う人材にも経験に基づく高度なスキルが求められます。施設ごとにレシピは異なります。それは職人技の世界。人口減少に伴う将来的な財政課題も予想されています」。

 「一方、AIを活用すれば、巨大な〝施設〞だけでなく、小型で移動可能な水処理技術を小さな〝設備〞として提供することができます。水の再生利用が容易になれば、災害対策はもちろん、水のインフラが整備されていない地域での建築や、水廻り設計の簡素化による建築設計の自由度向上にもつながるなど、さまざまな利点を見出せす」。

 

②につづく