COMODO建築工房とは?
栃木県宇都宮市の設計事務所兼工務店。代表の飯田亮さんは、住宅建築家の伊礼智さんが学長として務める「住宅デザイン学校」の卒業生。伊礼智さんから学んだ、木の見せ方、外と内の関係性、空間がもつ豊かさを設計に取り入れている。
大きな敷地に小さく建てる
訪れたのは7月初旬の雨上がり。青々とした稲が風に揺れ、紫陽花が小さな花をたくさん咲かせ、夏に向けて緑が濃くなった山々に囲まれたのどかな場所に「山抱く家」はあります。367.43㎡(111.0坪)という広大な敷地に対して、COMODO建築工房が手がけた平屋は 86㎡(26坪)のコンパクトなものでした。
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黒塗装のスギが映える平屋
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山を抱くようにくの字型にした平屋の家
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キッチンを中心に考えられた平面図
道路から水路を挟んで1m程高い敷地に上がると、黒で塗装したスギの外壁が雨に濡れたみずみずしい草花のなかで映えます。麻生地でつくった網戸は均一ではないカサカサとした質感があり、自然豊か風景に馴染みます。
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接動からゆるやかな坂を上がると平屋の可愛らしい外観が見える
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麻生地でつくった玄関の網戸
COMODO建築工房が建てる家は、住まい手から“ずっといたくなるような居心地のよさがあるよね”と言われるそうです。
その秘密を「山抱く家」を案内してもらいながら飯田さんにうかがいました。
① 天井の高さは2,100㎜
写真では分かりづらいかもしれませんが、天井の高さは2,100㎜。通常の天井高は2,400㎜程度ですから、家に入った瞬間になんとなく天井の”存在”を感じます。圧迫感はなく、むしろやさしく包み込まれる“巣に帰ったような”感覚を覚えます。
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無駄のないシンプルなリビング
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リビングからダイニングキッチンを見る
② 外と内をつなぐ窓で抜けをつくる
天井が低い分、窓から抜ける身近な風景に意識が向かいます。「山抱く家」では、南側の山が見える位置に、この家で一番大きな片引きの窓を設置しました。リビングのソファに腰かけると、視線が抜けます。また、キッチンで作業をしているときや、ダイニングテーブルに座ったときにも山が見えるように、横長の窓を設けています。天井にはダウンライトはなく、間接照明やペンダントなどやさしい光源を使っています。窓からの光と影のコントラストが空間に陰影をつくり、奥行きを感じることができるのだそうです。
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リビングのソファに腰掛けると、視線の向こうに山が見える
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片開き戸の先には風景を一望できるウッドデッキがある
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キッチンから窓を見る
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ダイニングテーブルに座ると風景がちょうどよく見える
③ 手に触れ、目に近い素材には本物の素材を使う
コンパクトな家だからこそ、素材のよさが自然と目に触れます。「山抱く家」では、床は幅160㎜のスギの無垢材、壁や天井にはドイツ本漆喰の「プラネットウォール」(プラネットジャパン)をローラー塗りしています。また、枠や巾木はラワンを使っています。
大きな家の場合、よい素材を使うと費用が掛かってしまいますが、小さな家は建築面積を抑えた分、素材に予算をまわすことができます。
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木製サッシはオリジナルで、よしず入り
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キッチンから玄関を見る。漆喰や障子、無垢材などの自然素材をふんだんに使用した空間
④ 気持ちを切り替える廊下
玄関から入ると、すぐ左手に見える廊下の幅も少し狭めの800㎜。ゆるいカーブを描いた廊下の先には寝室があります。設計した飯田氏によると「LDKの活動する場から、寝室という休む場に行くときに、この廊下で気持ちの切り替えができるように」とのこと。すべての部屋が広い、明るいではなく、空間にメリハリをつけることで、住まい手の気持ちに寄り添った間取りをつくることができます。
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カーブを描いた廊下の先はこもり部屋と寝室
⑤ こもれる場所をつくる
COMODO建築工房の見学会に来られた方が絶賛するのが、この小さな小さな「こもり部屋」。「山抱く家」にも、廊下のそばに2帖弱の小さなこもり部屋があります。床の高さを300㎜ほど下げ、落ち着いたオリーブカーキ色のふかふかの絨毯(東リ)が敷き詰められています。旦那さんがよく逃げ込む場にもなっているそうです(笑)。
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2帖弱のこもり部屋。心地よすぎてずっといたくなりました(笑)
“小さな家で、大きく暮らす”と建築家の故・永田昌民さんが仰ったように、この家に訪れて大きな家だけが幸せの形ではない気がしました。こだわりの素材や建材を使い、気持ちに寄り添った間取りの小さな家を建てることも、家づくりの1つの選択肢ですね。
最後に、動画で家全体をご紹介します!
山抱く家
所在地:栃木県鹿沼市
家族構成:夫婦(将来は子ども2人の予定)
構造:木造軸組構法
敷地面積:367.43㎡(111.0坪)
延床面積:86㎡(26坪)
施工年数:2020年6月
設計・施工:COMODO建築工房
テキスト:編集部